[データ入門]さまざまな平均(2) 調和平均
今回は算術平均、幾何平均に次いで3つ目の平均値「調和平均」についてご紹介します。
少し求め方が分かり辛いのでまずは定義から。
$$\bf\LARGE 調和平均値=\frac{1}{データの逆数の算術平均}$$
※逆数:ある数と掛け算した結果が1である数。2の逆数は1/2。
つまり、データの逆数の算術平均 の逆数ともいえます。
調和平均は比や割合を取り扱うことに長けた平均値ですが、この式を見てもその有効性は見て取ることができません。実際の用例を見てみましょう。
A君は自宅から目的地まで行きは60km/h、帰りは40km/hで車を運転しました。
A君の車の行き帰りの平均速度は時速何㎞でしょうか?
$$\frac{60+40}{2} = 50km/h$$
としてしまっていいでしょうか。
試しに自宅から目的地までの距離を\(x(km)\)としてみましょう。
行きの運転時間は \(\frac{x}{60}(h)\)、帰りの運転時間は\(\frac{x}{40}(h)\)となります。
距離 | 速度 | 時間 | |
---|---|---|---|
行き | $$x$$ | $$60$$ | $$\frac{x}{60}$$ |
帰り | $$x$$ | $$40$$ | $$\frac{x}{40}$$ |
計 | $$?$$ | $$?$$ | $$?$$ |
平均速度は運転した時間当たりの進んだ距離なので
$$\frac{進んだ距離}{運転した時間} = \frac{x+x}{\frac{x}{60}+\frac{x}{40}} = \frac{2}{\frac{1}{60}+\frac{1}{40}} = \frac{2}{\frac{5}{120}} = \frac{240}{5} = 48km/h $$が正しい回答です。 もう気付いた方もいるかもしれませんね。
解答の途中で登場した$$\frac{2}{\frac{1}{60}+\frac{1}{40}}$$を書き換えると $$\frac{1}{\frac{1}{2}\times(\frac{1}{60}+\frac{1}{40})}$$となります。
逆数の算術平均を分母にとった単位分数となっています。これが調和平均です。
比や割合に適したといっていたのに40と60なんてただの数値では?と思うかもしれませんが、そもそも速度は距離/時間で示される比の値です。
他にも、電気抵抗を並列につないだ時の合成抵抗や、仕事算など様々な場面で用いられます。
AIの評価指標として用いられるF値も調和平均を用いたものですが、その話はまた別の機会に。
さて、ここまで平均値を幾つかご紹介しましたが、データの特性を表すのは平均値だけではありません。
次回からは平均値以外のデータの特長を示す値についてご紹介します。
ライターH.I