[データ入門]さまざまな平均値(1) 幾何平均
ある商品の売上個数が下のように推移したとします。
年 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
---|---|---|---|---|---|
売上個数 | 500 | 560 | 790 | 730 | 950 |
売上が向上していることはわかるのですが一年当たりどのくらい向上しているのでしょう?
前年比の売上変化率を計算すると次のようになりました。
年 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
---|---|---|---|---|---|
売上個数 | 500 | 560 | 790 | 730 | 950 |
前年比 | – | 112.0% | 141.1% | 92.4% | 130.1% |
では次の年もこのままの勢いで売り上げが向上するとするとどの程度の売上個数を見込めるでしょうか。
そのために前年比売上変化率の平均を計算しなくてはなりません。
まずは、お馴染みの算術平均をとってみましょう。
一年当たりの売上変化率(?):$$\frac{112.0\%+141.1\%+92.4\%+130.1\%}{4}\simeq118.9\%$$
本当にこれは正しい平均値でしょうか。試しに全ての年の変化率がこの値だったとして2017年からの値を計算してみましょう。
年 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
---|---|---|---|---|---|
売上個数 | 500 | 595 | 707 | 841 | 999 |
前年比 | – | 118.9% | 118.9% | 118.9% | 118.9% |
あれあれ?おかしいですね。2020年の個数が50個近くもずれてしまいました。
これは変化率の平均値の計算に算術平均が不向きであるためです。
こういった平均を求める際に幾何平均が用いられます。
幾何平均の求め方は以下の式で表されます。
$$\bf\LARGE 幾何平均値=データの総乗^{\frac{1}{データの大きさ}}$$
幾何平均はその算出方法から相乗平均とも呼ばれます。
では実際に幾何平均を用いて変化率を計算してみましょう。
一年当たりの売上変化率:$$(112.0\%\times141.1\%\times92.4\%\times130.1\%)^{\frac{1}{4}}\simeq117.4\%$$
この値でもう一度2017年からの値を計算してみましょう。
年 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
---|---|---|---|---|---|
売上個数 | 500 | 587 | 689 | 809 | 950 |
前年比 | – | 117.4% | 117.4% | 117.4% | 117.4% |
今度はきちんと2020年の売上個数が一致しました。
来年の売り上げ個数は950×117.4%=1115個程度を見込めるでしょう。
このように、データの性質によっては平均が使い分ける必要があります。データを理解して正しい解析を行うことが大切です。
次回は第三の平均値、調和平均をご紹介します。
ライター:H.I